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水苔について

コケ類は下等植物の一種でゼニゴケや松藻などがあり、蘚苔類という植物部門を形成しています。葉や茎の区別が不明確で根茎がないのが特徴です。緑葉植物は生命活動を維持するためのエネルギーを光合成によって得ていますが、空気中の二酸化炭素と主に土壌から吸収する水分の必要量は、各植物の環境への適合性により左右されます。高等植物は体内に水分を確保するために外側に厚い保護層を発達させており、気孔という二酸化炭素の通り道を備えています。ところが、コケ類にはこのような保護層や二酸化炭素の通り道がなく、水分が直接細胞壁を通って入ってきます。水分は蒸散によって損なわれるため、コケ類は水分のバランスが保たれる多湿な又は水が豊富な地帯や沼地に分布しています。

 

水苔の沼地は低温で降水量が多く排水性の乏しい地域に形成されます。このような条件下では土壌から栄よう分がろ過され、水苔の生息に適した酸性土が残ります。水苔が育つニュージーランド西海岸地方の土壌の大部分はゲライ系ポドゾルですが、これは鉄分を含む腐食層が固い砂礫層の上に堆積してできる土壌で、浸水と酸素欠乏により上段に灰白色の層が形成されます。

 

水苔の細胞はスポンジに似たつくりにっているので水分を含みやすく、水素イオンを放出することにより高い酸性を維持します。高酸度の環境では植物を分解するバクテリアが繁殖できないので、枯れた水苔はそのまま堆積してピートモスになります。水苔には抗菌性があり、第1次世界大戦中には外傷治療の湿布薬として利用されていましたし、水苔を扱う作業員からは疣や白癬や皮膚がんの症状まで軽減したという報告があります。また、水苔は遊離ポリウロン酸分子の働きにより優れた陽イオン交換量を持ち、栄よう分を非常によく移動させることができます。水苔やピートモスが植物繁殖に広く利用されているのはこのためです。CaMgKNa等の陽イオンと水素イオンを交換することにより、水苔は周囲のpH値を低下させます。

 

水苔はコケ類の中でも下位分類を組織し、ぶら下がったり広がったりした房状のえだを持つことを特徴としています。また、独特な葉の細胞のつくりにより、乾燥時重量の最大2000%の水を吸収することができます。

 

ニュージーランドには少なくとも次の6種類の水苔が存在します。Sphagnum.cristatumS.australe(antarcticum)S.falcatulumS.subnitens S.squarrosum S.subsecundum(この種は複雑でおそらく34種の集合体だと思われます。)の6種類です。中でもSphagnum cristatumはニュージーランド水苔の主要種で、ニュージーランドやオーストラリアに広く分布しています。この種は新芽が30pまで伸びることがあり、白、緑、茶色や時には赤味を帯びた色をしているものがあります。Sphagnum cristatumの葉には、幅広で平らな柄を持つものと、細くて窪みのある柄を持つものの2種類があります。水苔には根茎がないので、葉柄の外層や下方に伸びたえだの働きに頼って水分を汲み上げます。中には水面からかなり高く突き出ている種類もあり、速い毛管作用で成長部分に絶えず水分を供給しています。水苔の各器官の境目は不明確で、生きている部分と枯れている部分を識別することは難しいですが、株全体が枯れるということは稀で、一個の株が同じ場所で何世紀にもわたって生息することもあります。通常10年程度で生長がとまり、堆肥化が始まると言われています。

 

水苔は通常無性生殖(母体の一部が分かれて新個体ができる)を行いますが、有性生殖を行うこともあります。雌株の先端にある黒ずんだ胞子嚢の中に胞子が形成され、胞子は成熟すると胞子嚢の外に飛び出し、風にのって放出されます。

 

水苔の葉はわずか細胞一つ分の厚さしかなく、水分を含む空洞で透明な死細胞と、葉緑体を含む細い緑色の生細胞から成り立っています。葉と同様、水苔の茎にも大きく空洞のある透明細胞があり、水分を吸収するための孔が多く存在します。Sphagnum cristatumにはこの細胞の層が3層以上あります。茎の中心部の細胞は透明細胞よりも小さく厚い細胞壁を持ち、植物体全体を支える役目を果たしています。また、Sphagnum cristatumには葉や茎の透明細胞に細毛ありますが、これは他のニュージーランド水苔種には見られない特徴です。

 

 

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